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幾多の「業界初」に挑む!豊橋工場再構築プロジェクトストーリー平成二六年三月、「人や地域と共存できる工場」をコンセプトに、新しく生まれ変わった豊橋工場。総工費は約一○億円。発電量一○○キロワットの太陽光発電システム、ピット内集塵装置の導入など、業界の常識を覆した一大プロジェクトの裏側には、どんな苦労や挑戦があったのか。鉄スクラップ業の新しい歴史に名を刻んだ、男たちの物語。

登場人物

  • Episode1 清水 浩二

    工務部 次長 45歳 平成5年入社
    生産管理に従事し、平成15年から各工場の再建を担当。関係機関への申請・調整を中心に、プロジェクトリーダーとして手腕を発揮。

  • Episode2 太田 吉哉

    豊橋工場長 部長 53歳 平成7年入社
    入社以来、豊橋工場で業務に従事。今回のプロジェクトでは、誰よりも現場を知る立場からレイアウトと工程の全体に携わった。

  • Episode3 天野 賢二

    工務部 係長 36歳 平成17年入社
    清水らと共に、各工場の再建業務を経験。今回のプロジェクトでは、初めて主導的な立場で設計・設備を担当した。


Episode1

厚さ10㎝超! 申請書類との格闘。 工務部 次長 清水 浩二

絶対に失敗できないプロジェクトに挑む。

「ついに来たか」。これまでに東栄、豊田、四日市、田原、碧南、岐阜など数多くの工場の再生を手掛けてきた清水は、豊橋工場のリニューアルの話に特別な思いを感じていた。環境に配慮した操業を推進する新英金属の中で、唯一豊橋工場だけが屋外で解体作業を行っていたからだ。自動車関連企業の生産拠点の海外移管に伴い、豊橋工場では自動車由来の原料は減少傾向にあったが、反面、建築物解体由来のスクラップは年々増加し、現在では全取扱い量の4割を超えている。加えて新英金属の最東端に位置する豊橋工場は今後、東日本への進出の拠点となるはずだ。上層部からの指示は、環境面も生産性も最高水準の、時代の変化に対応できる工場。「失敗は許されない、そう感じました」。品質、対応、価格など、さまざまな面を考慮し、ゼネコンと設計事務所を決定した。平成22年、3月のことだった。

申請業務は長期戦と心得よ。

工場建設において、自治体や警察、消防署などへの許認可は、最もやっかいな業務のひとつだ。しかもスクラップ業は通常の建築計画のほか建設リサイクル法、廃棄物処理法等各法令に伴う申請も必要で、さらに今回はISO14001に附随する許認可もあるため、環境、廃棄物処理、区画整理など、20~30の窓口と関わることになる。中でも多くの窓口で、担当者が変わるたびに指示の内容も変わることが、清水らを苦しめた。厚さ10㎝を超える申請書類は付箋だらけになり、いつまで経ってもそれが減らない。「一度OKが出た計画をひっくり返されたこともありました。でも対立しても仕方がない。指摘された問題は、社のメンバーとゼネコン、設計事務所担当者で週1回開く工程会議で共有し、対策を練りました」。すべての申請に許可が下り、工事が始まったのは、平成25年5月。プロジェクト発足から約2年が過ぎていた。


Episode2

現場から、 新しい風を起こす。 豊橋工場長 部長 太田 吉哉

地域に根付く工場をめざして。

「工場を一番よく知る人間として、近隣の住民を含めた現場の声を上げねば」。リニューアルの話を聞いた時、太田はそう直感した。昭和56年の開設時から30年余り。豊橋工場と共に歩んできた太田の頭には、世の中が「エコ」や「人への優しさ」に注目するずっと前から「地域との共生」が深く刻まれていた。「もともと周辺地域は、工業用地だったんです。しかし都市計画の変更によって住宅地に変わり、工場のすぐ東側に住宅が立ち並ぶようになると、騒音や振動、粉塵などの苦情が寄せられるようになりましてね」。問題が起こるたびに住民に頭を下げて回り、防振装置の導入なども積極的に行ってきた太田。「今回のリニューアルでは、工場としての機能や生産性の向上はもちろん、近隣住民への配慮を最優先課題に掲げようと決意したんです」。

夢の実現は言葉に出すことから始まる。

リニューアルでは、第1期工事で非鉄専用の東工場を新設し、第2期工事では従来の工場を解体した後、ギロチン加工専用の西工場を建設すべく、計画が進められた。太田は第1期工事に先駆けて、工場の東側全域にわたって防音・防塵のための壁を設置することを嘆願した。将来はもとより工期中の住民への負担を極力減らすためだ。「防音壁の効果は絶大で、心配していた工期中の苦情は1件もありませんでした」。続く西工場の建設でも、防音性に優れたコンクリート構造の建屋や、強力な防振装置の導入を提案。工場のシンボルである敷地正面の池の周りにも芝生エリアを作り、従業員や地域の人々が憩える場となるよう進言した。「これが本当に実現するのかと、当時は半信半疑でした」と笑顔で話す太田は、その後、この「夢のような工場」の完成の瞬間を目の当たりにすることになる。


Episode3

今までにない工場への挑戦。 工務部 係長 天野 賢二

横から縦に。逆転の発想で処理量1.5倍を実現。

「本当に自分にできるのか?」。清水に新豊橋工場のレイアウト・設計を打診された天野は、思わぬ大役に驚きながらも快諾した。早速太田工場長らと社内外の全国の工場を見学して回り、まず取り組んだのが効率を重視したレイアウトだった。「西工場には今までの1250tに変わり、1600tの油圧スクラップシャー(金属を切断・圧縮するギロチン機)が導入されることになっていました。単純計算をすれば処理量は従来の約1.5倍です。そこで、量が増えてもスムーズに作業できるよう、従来、横長の工場に対して平行に設置されていた油圧スクラップシャーを垂直方向に設置し、半分を屋外に出してみたんです」。屋外といっても地下を利用するので騒音の心配はない。これにより作業スペースが拡大し、工場に持ち込まれた原料の荷下ろし→選別→加工→出荷が一方通行でスピーディに行えるようになる。天野にとって一つ目の大仕事だった。

加工ピット内に業界初の集塵機を搭載。

続いて天野が着手したのは、油圧スクラップシャーのピット内に業界初となる集塵機を設置することだった。この業界での一番悩ましい問題である粉塵に関して過去色々な方法で粉塵防止をこころみたが思う程効果は出なく今回集塵装置の導入をこころみた。全ての粉塵を吸引する事は出来ないかもしれないがピット内をマイナス圧にする事により工場内への飛散を防ぐことができるのではないかと、頭の中に閃いたのです。それは地域の人々、そして現場で働く従業員への配慮だった。集塵機を設置することで当然処理スペースは小さくなる。上層部に提案する際は不安で一杯だったが、「やってみろ」と言ってくれた。「新英金属は本当にいい会社だと今さらながら感じました(笑)」。ほかにも、天井クレーンのオペレータ席の下部を45度にカットして足元が良く見えるよう特別加工を施すなど、随所に天野の現場経験に基づく工夫と愛情が詰まった工場が実現した。


Eprogue

新たな歴史を刻み始める豊橋工場

取材を行ったのは、2014年3月28日の竣工を間近に控えた2月。工事は西工場内の一部の塗装などを残すのみとなっている。壁一面に太陽光発電システムが施された建物は、IT企業の最新工場と見紛うほどだ。新工場を前に、清水は「やりきった」と笑顔を見せ、太田は「立派過ぎて業界の工場じゃないみたいだ」と目を細める。そして天野は、「実際に稼働してみないと成功かどうかわからない」と安堵の表情を見せなかった。3人の協力で築き上げた新豊橋工場は、地域との共生のシンボルとして、また新英金属のさらなる発展を担う中枢拠点として、100年先の未来に向かって新たな歴史を刻み始める。